過去のオリンピックでマラソン日本代表選考は、
数々の騒動を起こしてきました。
東京オリンピックでは、「国民が納得できる選考方法を」ということで、
MGC(マラソングランドチャンピオンシップ)を開催し、
代表を決めることになりました。
MGC(マラソングランドチャンピオンシップ)とは
瀬古利彦と河野匡が考え出した、誰もが納得できる選考方法です。
瀬古利彦の改革案「誰もが納得できるのは一発勝負」
マラソンはコースによって坂道や平坦など様々です。
さらに、暑さや風など気象条件も毎回違います。
それに、序盤からのペースによってもゴールタイムが大きく変わります。
この様に、マラソンは違うレースを比べるのが非常に難しいスポーツです。
プロでも見解の相違が出ますし、
詳しくない国民だとタイムだけを見てしまいます。
誰もが納得できる選考方法は、
みんなを一緒に走らせる「一発勝負」になります。
これで議論の余地を挟みません。
昔から一発勝負の案はあったのですが、
日本には主要マラソンレースが男女ともに3つずつあって、
それぞれを担当するスポンサーやテレビ局の利権もあり、
一つのレースに絞ることができませんでした。
今回、改革を任された瀬古利彦が豪腕を発揮して、
やっと古い体制を壊して、より良い制度を作りました。
瀬古利彦の改革案「ポッと出の一発屋が選ばれないこと」
瀬古利彦は一発屋が代表に選ばれることを嫌いました。
過去のオリンピックを見ても、
実績の無い選手が選考レースだけ活躍して代表になったものの、
本番のオリンピックでは惨敗を喫することが多くありました。
そして、オリンピックでメダルを獲るような選手は、
それまでにしっかりとした実績を持ってることに気づきました。
実績を残した選手が代表になれるように、
一発屋を排除する選考方法が求められます。
河野匡の改革案「一発屋が選ばれない一発勝負」
そこで、河野匡が考え出したのが、
実績のある選手だけを集めた一発勝負です。
それがMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)になります。
MGCに出る選手は陸連に指定された主要レースで、
順位やタイムをクリアした一流選手だけなので、
その中で1位2位に入った選手ならば、
ポッと出の一発屋ではありません。
それでいて国民が見て一目瞭然に強い選手が選ばれるので、
誰もが納得する代表選考となります。
瀬古利彦はMGCの発案した河野匡のことを、
「天才」と表現しました。
代表3人目の枠はタイム
MGCでは上位2名を代表に決めるため、
レース展開はタイムを出すよりも、
勝負に徹する選手が多く出ることが予想されます。
つまり、序盤はスローペースで走って、
30キロ過ぎからのスパート合戦で勝負が決まる展開です。
実は、この展開だとスピードが抜群のアフリカ勢の独壇場なので、
オリンピックで日本選手がこのペース配分をした場合に、
勝てる見込みが薄くなります。
そこで3人目の代表はタイムで決めることにしました。
男子は2019年福岡国際マラソン、2020年東京マラソン、2020年びわ湖毎日マラソンで、
2時間5分49秒を突破した選手の中で、最も速いタイムの選手が代表3人目に。
女子は2019年さいたま国際マラソン、2020年大阪国際マラソン、2020年名古屋ウィメンズマラソンで、
2時間22分22秒を突破した選手の中で、最も速いタイムの選手が代表3人目に。
タイムを出すためには、序盤からハイペースで行く必要があるので、
MGCで決まった代表2人とは、違うタイプの選手が選ばれます。
本番のオリンピックを見据えた多角的な選考方法でありながら、
既存のマラソン主要大会も代表選考の価値を持つため、
スポンサーや、中継するテレビ局にも配慮した画期的な方法となりました。
本当に河野匡は天才ですね。
ただし、男女ともにこの設定タイムは相当速いです。
この基準をクリアする選手が出てこない場合も十分ありえます。
誰も超えられなかった場合は、
MGCで3位選手がオリンピックの代表になります。
なのでMGCで2位に入れなくても、3位を狙う価値は十分にあります。
MGC男子の結果
順位 | 名前 | 所属 | タイム |
---|---|---|---|
1位 | 中村 匠吾 | 富士通 | 2:11:28 |
2位 | 服部 勇馬 | トヨタ自動車 | 2:11:36 |
3位 | 大迫 傑 | Nike | 2:11:41 |
4位 | 大塚 祥平 | 九電工 | 2:11:58 |
5位 | 橋本 崚 | GMOアスリーツ | 2:12:07 |
6位 | 竹ノ内 佳樹 | NTT西日本 | 2:12:31 |
7位 | 鈴木 健吾 | 富士通 | 2:12:44 |
8位 | 中本 健太郎 | 安川電機 | 2:12:46 |
9位 | 藤本 拓 | トヨタ自動車 | 2:13:58 |
10位 | 岡本 直己 | 中国電力 | 2:14:55 |
11位 | 上門 大祐 | 大塚製薬 | 2:15:08 |
12位 | 山本 浩之 | コニカミノルタ | 2:15:52 |
13位 | 河合 代二 | トーエネック | 2:15:56 |
14位 | 設楽 悠太 | Honda | 2:16:09 |
15位 | 堀尾 謙介 | トヨタ自動車 | 2:16:21 |
16位 | 山本 憲二 | マツダ | 2:16:44 |
17位 | 神野 大地 | セルソース | 2:17:40 |
18位 | 木滑 良 | MHPS | 2:18:51 |
19位 | 谷川 智浩 | コニカミノルタ | 2:18:56 |
20位 | 岩田 勇治 | MHPS | 2:19:45 |
21位 | 村澤 明伸 | 日清食品グループ | 2:19:52 |
22位 | 福田 穣 | 西鉄 | 2:19:55 |
23位 | 佐藤 悠基 | 日清食品グループ | 2:20:13 |
24位 | 藤川 拓也 | 中国電力 | 2:20:35 |
25位 | 今井 正人 | トヨタ自動車九州 | 2:21:15 |
26位 | 園田 隼 | 黒崎播磨 | 2:21:51 |
27位 | 井上 大仁 | MHPS | 2:22:10 |
DNF | 高久 龍 | ヤクルト | - |
DNF | 荻野 皓平 | 富士通 | - |
DNF | 宮脇 千博 | トヨタ自動車 | - |
DNS | 一色 恭志 | GMOアスリーツ | - |
MGC女子の結果
順位 | 名前 | 所属 | タイム |
---|---|---|---|
1位 | 前田 穂南 | 天満屋 | 2:25:15 |
2位 | 鈴木 亜由子 | 日本郵政グループ | 2:29:02 |
3位 | 小原 怜 | 天満屋 | 2:29:06 |
4位 | 松田 瑞生 | ダイハツ | 2:29:51 |
5位 | 野上 恵子 | 十八銀行 | 2:31:14 |
6位 | 一山 麻緒 | ワコール | 2:32:30 |
7位 | 福士 加代子 | ワコール | 2:33:29 |
8位 | 安藤 友香 | ワコール | 2:36:29 |
9位 | 岩出 玲亜 | アンダーアーマー | 2:41:22 |
DNF | 上原 美幸 | 第一生命グループ | - |
DNS | 関根 花観 | 日本郵政グループ | - |
DNS | 前田 彩里 | ダイハツ | - |
MGCで東京オリンピック代表内定者が決定
男子は中村匠吾、服部勇馬。
女子は前田穂南、鈴木亜由子。
それぞれ2020年東京オリンピックのマラソン代表に内定しました。
男女とも残り1枠は、今後の指定レースでのタイムで決まります。
誰も設定タイムを超えられなかった場合は、
MGC3位の大迫傑と小原怜がそれぞれ代表に選ばれます。